2026/09/18 14:19

写真を整理していたら、懐かしい写真が出てきました。
写真の日付を見ると2009年10月。今から17年ほど前のものです。

当時はホームシアターなどの5.1chサラウンドが広く普及し始めていた時代で、カーオーディオでもサラウンド対応製品やシステムが登場し、今とは少し違った楽しみ方もされていたと記憶しています。

この写真も、当時乗っていた車に、今でいう「リアフィルスピーカー」のような役割のスピーカーをDIYで製作して取り付けたときのものだったと思います。

今見ると、「こんなことやってたな」と懐かしくなります。

今はインターネットやSNS、動画などで、カーオーディオについて調べれば非常に多くの情報を得ることができます。
これはとても良いことだと思います。

一方で、これから始めようという人にとっては、最初からかなり専門的な情報まで目に入ってくる時代でもあります。

そこで今回は、昔の自分を少し思い出しながら、これからカーオーディオを始めてみようと思っている方に向けて、「そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないか」という話を、私自身の経験や思いも含めて書いてみようと思います。

◆「面白そう」より「難しそう」になっていないか

これからカーオーディオを始めてみようと思ってカーオーディオについて調べていると、タイムアライメント、位相、クロスオーバー、EQ、周波数特性、インパルス応答、スピーカーの取り付け位置や角度、反射、吸音……

たくさんの専門的な言葉を目にするかと思います。
さらに深く追求していけば、DSPで細かく補正するだけではなく、スピーカーの位置や角度そのものを見直し、測定して、調整して、聴いて、また変更する。

そんな非常に奥深い世界があります。
もちろん、これはカーオーディオの大きな面白さの一つです。

車内という音響的には決して理想的とは言えない環境で、どうすればもっと良い音になるのかを取り付けや機器、調整を一つずつ考えて理想の音に近づけていく。

この様に本気で追求すれば、どこまでも深く掘り下げられる趣味だと思います。

ただ、これからカーオーディオを始めたいと思った人やその世界を初めて見た人が、「カーオーディオって、そこまでやらないと音が良くならないの?」と思ってしまうとしたら、少しもったいないとも感じます。

上記の様に「面白そう」より「面倒そう」が勝ってしまうというのはカーオーディオに限った話ではありません。

例えば、これからカメラを始めようとしている人に、最初からレンズのMTF特性、回折、ダイナミックレンジ、RAW現像、カラーマネジメントなどを詳しく説明したらどうでしょう。

どれも写真を深く追求するうえでは意味のある知識かと思います。
でも、これから始めようとしている人にとっては、

「なんだか難しそう」
「そこまで勉強しないと楽しめないの?」

となってしまうかもしれません。
そうなると、「面白そう」より「面倒そう」が勝ってしまいます。

カーオーディオも同じだと思います。
奥が深いこと自体は魅力ですが、入口からその奥深さを全部理解する必要はありません。

◆スピーカーを交換するだけでも、立派なカーオーディオ

純正スピーカーから社外スピーカーへ交換して、

「ボーカルが聴きやすくなった」
「今まで聞こえなかった音が聞こえるようになった」
「低音がしっかりした」
「いつもの曲を聴くのが楽しくなった」

それだけでも十分にカーオーディオを楽しんでいると思います。

必ずDSPを付けなければいけないわけではありません。
必ず外部アンプを使わなければいけないわけでもありません。

スピーカーとパッシブネットワークを使ったシンプルな2WAYでもいいですし、純正システムにサブウーファーを追加するだけや、単純にスピーカーを交換するだけでもいいです。

大切なのはシステムの規模や価格ではなく、結果的に自分の好きな音楽を聴くことが楽しくなったかだと思います。

◆DSPは「必要なもの」ではなく「できることを増やすもの」

昨今のカーオーディオでは、DSPが非常に一般的になり、価格的なハードルも昔に比べてかなり導入し易いものとなりました。

タイムアライメント、クロスオーバー、EQ、レベル調整などを細かく設定できるDSPは、使いこなせれば非常に強力な道具です。

車内では左右のスピーカーまでの距離が異なり、ガラスやダッシュボードなどから多くの反射も発生します。そのような環境を整えるうえで、DSPが有効なのは間違いありません。

実際、より高いレベルを目指すのであれば、DSPによってできることは大きく広がります。

ただ、「良い音にするためにはDSPが必須」ではありません。

DSPを導入すると、できることが増えます。
一方で、できることが増えるということは、決めなければならないことも増えます。

クロスオーバー周波数をどこにするのか。
スロープはどうするのか。
タイムアライメントはどう合わせるのか。
EQはどこまで使うのか。

自由度が高いからこそ、初めてカーオーディオに触れる方にとっては、調整まで含めると少し敷居が高く感じることもあると思います。

だからDSPは、カーオーディオを楽しむための必須条件ではなく、「もっとやりたくなったときに、できることを増やしてくれるもの」くらいに考えるのが良いかと思います。


一方で、弊社がDSPを取り扱ううえで重視していることがあります。


DSPには非常に多くの機能があり、カーオーディオを始めたばかりの頃には「こんな機能まで必要なの?」と思うものも少なくありません。


しかし、実際に使いながらクロスオーバーやタイムアライメント、EQなどへの理解が深まり、システムを発展させていくと、最初は必要ないと思っていた機能が後になって欲しくなることがあります。


スピーカーを増やしたい、マルチアンプ化したい、入力や出力の自由度を高めたい、より細かな調整をしたい。そうなったときにDSP自体の機能が足りず、やりたいけど出来ない、さらに費用がかかる、となるのは非常にもったいないと思います。


最初は必要な機能だけを使う。でも、やりたくなったときには、その先の機能もちゃんと用意されている。

DSPについては、そんな「後からできることを増やせる余裕」も、製品選びの大切な部分だと考えています。


スピーカー自体についても、弊社取り扱い製品では「スピーカー交換だけでも価値があること」を大切にしています。
特に比較的手に取りやすい価格帯のスピーカーについて、スピーカーを交換するだけでも、きちんと音の変化と製品の価値を感じられることを大切にしています。

もちろん、DSPを導入してしっかり調整すれば、さらにできることは増えます。

しかし、これからカーオーディオを始める方にとっては、DSP本体の購入だけではなく、取り付けや設定、そして調整まで含めると、決して簡単と言えるものではありません。

「車の音を良くしたい」と思っただけなのに、スピーカーを交換して、DSPも取り付けて、PCを接続して、クロスオーバーを決めて、タイムアライメントを合わせて、EQを調整して……

最初からそこまで必要だと思ってしまえば、「カーオーディオって大変そうだな」となってしまう方も多くいるかと思います。

だからこそ弊社では、特にエントリーから比較的手に取りやすい価格帯のスピーカーについて、最初からDSPを前提としなくても楽しめることを意識した製品構成としています。

弊社の言うエントリーという括りはそういった意味合いが大きいです。


例えば2WAYスピーカーであれば、まずは付属のパッシブネットワークを使って鳴らす。
難しい調整をしなくても、スピーカーを交換したことで純正から音が大きく変わったことを感じてもらう。
まずはそこからでいいと考えています。

◆最初から完成形を目指さなくてもいい

例えば2WAYスピーカーであれば、まずは付属のパッシブネットワークを使って鳴らしてみる。
難しい調整をしなくても、純正からスピーカーを交換したことで音が変わったことを楽しむ。

そこから、

「もう少し定位を良くしたい」
「ボーカルをもっと目の前に出したい」
「クロスオーバーを自分で調整してみたい」
「スピーカーをそれぞれ細かく制御してみたい」

と思うようになったら、その段階でDSPを導入してもいいですし、さらに追求したくなれば、パッシブネットワークからマルチアンプシステムへ移行することもできます。

スピーカーを交換する。
まずはパッシブで楽しむ。
もっと追求したくなったらDSPを追加する。
さらにマルチ化や細かな調整へ進む。

そんなふうに、自分の興味や予算に合わせて段階的に進んでいけばいいと思います。

パッシブとDSP、どちらにも良さがあります。

パッシブには、比較的シンプルな構成で、設計されたクロスオーバーによってスピーカーを鳴らせる良さがあります。

一方DSPには、車両や取り付け状態に合わせてクロスオーバーを変更したり、左右を個別に調整したり、タイムアライメントによって音像を整えたりと、パッシブではできない細かな調整ができます。

パッシブかDSPかではなく、自分がどこまでやりたいか。
どちらもカーオーディオの楽しみ方だと思います。

◆数値を合わせることだけが目的にならなくてもいい

カーオーディオを深く追求していくと、測定も重要になってくる場面もあります。

RTAで周波数特性を見る。
左右のレベルを合わせる。
位相を見る。
タイムアライメントを細かく調整する。

こうした測定は、耳だけでは分かりにくい問題を見つけるための非常に有効な手段です。
ただ、測定結果をきれいにすること自体が最終目的ではありません。
最終的に聴くのは測定信号ではなく音楽ですので、測定上は少し凸凹があっても、好きな曲を流したときに、「この音、好きだな」と思えるのであれば、それには十分な意味があります。

逆に測定結果がきれいでも、自分が聴いていて楽しくなければ、少し自分の好みに寄せることも必要です。
測定は視覚的に見れるのでとても便利ですが、答えそのものではなく、自分の中の答えを探すための道具の一つです。

◆「正しい音」だけを探さなくてもいい

カーオーディオには、さまざまな楽しみ方があります。
では、そもそもカーオーディオにおける「正しい音」とは何なのでしょうか。

周波数特性がきれいに整っていることなのか。
定位や音場が正確であることなのか。
録音された音をできるだけ忠実に再現することなのか。

もちろん、オーディオには音響的・技術的に評価できる部分があります。
しかし、それだけで「この音が正解」と決められるほど単純なものでもありません。

聴く人によって、心地よいと感じる低音の量も、高域の質感も、ボーカルとの距離感も違います。
ある人にとって理想的な音が、別の人にとっても理想的とは限りません。

ましてカーオーディオは、車種やスピーカーの取り付け位置、車室内の形状など、それぞれ条件の違う環境で音楽を楽しむものです。
だから、趣味として楽しむカーオーディオの中で、一律に「正しい音」を決める必要もないと思います。

低音が好きなら、少し低音が強くてもいい。
ボーカルが好きなら、声が気持ちよく聴こえる音でもいい。
細かなことは気にせず、好きな曲を気持ちよく聴けるだけでもいい。

測定値やセオリーは、より良い音を作るための大切な手段ですが、それ自体が目的ではありません。
最終的には、車に乗って好きな音楽を流したときに、

「いい音だな」
「もっと聴いていたいな」

と思えること。

そう思えたなら、それも十分、その人にとっての「正しい音」なのだと思います。
カーオーディオは「正解を作る趣味」というより、「自分の好きな音を作っていく趣味」であると思います。

◆私自身も、最初から難しいことをしていたわけではありません

私自身、趣味としてのカーオーディオは26年以上楽しんできました。
でも、今振り返ってみると、始めた頃から専門的な知識があったわけでも、最初から本格的なシステムを組んでいたわけでもありません。

むしろ最初の頃は、純正スピーカーのツイーターに付いているコンデンサをフィルムコンデンサに交換して、

「高域が良くなった!」

と、それだけで喜んでいた記憶があります。

そこからツイーターそのものを交換してみたり、ドアスピーカーを交換してみたり、パッシブネットワークがセットになった2WAYコンポーネントスピーカーへ交換してみたり。

今思えば、本当に少しずつでした。

一つ変えて音が変わる。
それが面白くなって、また次のことをやってみる。

そんなことを繰り返していたように思います。

◆初めてのヘッドユニットはALPINE「MDA-W955J」

もう少し昔の話をすると、私が初めて自分で購入した社外ヘッドユニットは、2001年に発売されたALPINEの「MDA-W955J」でした。
当時の税別定価は95,000円でしたので、今の感覚でもそれなりに高価でしたが、当時のカーオーディオとしてはかなり本格的なヘッドユニットで、7バンドデジタルEQ、TCR(タイムコレクション)、3WAYディバイダーなどを搭載していました。

当時は今のようにDSPを追加してPCで細かく調整するというスタイルが一般的ではなく、ヘッドユニットを交換すること自体がカーオーディオの楽しみ方の一つだった時代です。

私自身も、最初からクロスオーバーや位相、タイムアライメントなどを理解していたわけではありません。

まずはヘッドユニットを交換して、スピーカーを交換してみる。
それだけでも純正とは音が変わり、「次は何を変えてみよう」と少しずつ興味が広がっていきました。

今振り返ると、最初から完成形を目指していたわけではなく、その時々で自分にできることを一つずつ試して、音が変わること自体を楽しんでいたのだと思います。

◆初めての単体DSPはJBL「MS-8」

その後に私が初めて取り付けた単体DSPは、2010年に発売されたJBLの「MS-8」でした。
MS-8は当時としてはかなり先進的で、8ch DSP+定格20W×8chアンプ、自動EQ、自動タイムアライメント、自動クロスオーバー、バイノーラルマイクによる測定、Logic7による5.1/7.1ch化まで搭載していました。

この機種を選んだ理由も、今考えると非常に単純です。
当時自分で細かく調整してまで良い音にしたいという欲求は無く、深い知識もあまりありませんでしたので、自動調整機能が付いていたからというのが大きな理由でした。

「難しいことは分からないけれど、簡単に良い音にしたい」そんな気持ちでMS-8を選んだ記憶があります。

実際に自動調整を使ってみると、再現性の問題なのでしょうけど、測定するたびに音が変わりました。笑

一度測定して「なんか違うな」と思ったらもう一度。
また測定して「さっきより良いかも」と思ったり。

結局、自分が「この音が良い」と思える結果になるまで何度も自動調整を繰り返していました。
今思えば、まるでガチャのようでした(笑)

でも、当時の私はそれでかなり満足していました。
専門的な測定ができたわけでも、自分で細かくクロスオーバーや位相を追い込めたわけでもありません。
それでも、それまでより音が良くなったと感じて、好きな音楽を聴くのが楽しくなった。

その時点では、それで十分だったのだと思います。

◆満足したからこそ、その次が出てきた

面白いのは、その後です。

カーオーディオを続けているうちに少しずつ知識も増えていきました。
色々と調べたり、実際に試したり、人のシステムを聴いたりする中で、

「ここをこうしたら、もっと良くなるのでは?」
「この部分を自分で調整できたらどうなるんだろう?」

というアイデアや疑問が出てくるようになりました。

ところが、やりたいことが増えてくると、今度は当時使っていたDSPでは実現できないことも出てきます。
結果として、DSPそのものも買い替えることになりました。
でも、今考えるとこれは失敗だったとは全く思いません。
最初から将来必要になるすべての機能を理解して、それを備えた機種を選ぶことなど、当時の自分にはできなかったからです。

◆知らないものを、最初から必要だと判断することは難しい

まず使ってみる。
そこで音が変わることを楽しむ。
少し分かってくると、「もっとこうしたい」が出てくる。
そして必要になったときに、次のステップへ進む。

私は実際に、そんな順番でカーオーディオを楽しんできました。

だから今、これからカーオーディオを始める方を見ていると、最初からあまり難しく考えなくてもいいのではないかと思います。

私自身、最初はツイーターのコンデンサを交換して喜んでいたところから始まっています。
そこからスピーカーを交換し、2WAYコンポーネントを使い、やがてDSPを導入しました。
そのDSPも、最初に選んだ理由は「自分で調整できないから自動調整してくれるものがいい」という、とても単純なものでした。

それでも十分楽しかった。

そして、楽しんでいるうちに自然と知りたいこと、試したいことが増えていきました。
カーオーディオは、最初からすべてを理解して完成形を作る必要はないと思います。
今の自分が分かる範囲、できる範囲から始めて、そこで音が変わることを楽しむ。

そして、「もっとやってみたい」と思ったときに、その次へ進めばいい。
振り返ってみても、私はそのくらいの楽しみ方でいいと思っています。

むしろ、一つ変えるたびに「音が変わった」と喜んでいた頃も含めて、その過程そのものがカーオーディオという趣味の面白さだったのだと思います。

◆その経験は、今の製品選びにもつながっています

そして現在、私自身が製品を取り扱う立場になって、この経験は製品を選定するときの考え方にもつながっています。

単純にスペックが高いものや、高価なものを揃えればいいとは考えていません。
大切にしているのは、その製品を導入した時点できちんと変化や価値を感じられること。
そしてもう一つ、その先に興味が出てきたとき、次のステップへ進みやすいこと。

この二つです。

例えば、比較的手に取りやすい価格帯のスピーカーであれば、最初からDSPや複雑な調整を前提にするのではなく、まずはパッシブネットワークを使ったシンプルなシステムでも、そのスピーカーへ交換した価値を感じてもらえることを重視しています。

それで満足できれば、そのまま楽しんでもらえばいい。

その後、

「もっと細かく調整したい」
「マルチで鳴らしてみたい」
「もっと上を目指したい」

と思うようになったら、DSPを追加したり、外部アンプを追加したりして、さらに先へ進める。

DSPについても同じです。
最初からすべての機能を使いこなせる必要はありません。

最初は必要ないと思っていた機能でも、使っているうちに知識が増え、「こんなこともやってみたい」と思ったときに必要になることがあります。

だから弊社ではDSPを選定する際も、価格だけではなく、最初はシンプルに使えて、その先を目指したときにも必要となる機能や拡張性を持っているかという点も重視しています。

私自身が過去に、使って、楽しんで、少しずつ知識が増え、そのたびに次にやりたいことが出てきたからこそ、「今楽しめること」と「その先へ進めること」の両方を大切にしたい。
それが現在の製品選定にもつながっています。

最初から最高のシステムを作るための商品を選ぶ、というよりも、まず交換して良かったと思える。
そして、もっとやりたくなったときにも、その製品を活かしながら次へ進める。

そんな製品をできるだけ揃えていきたいと考えています。

◆カーオーディオは、もっと気軽でいい

カーオーディオは確かに奥が深い趣味です。
本気で追求しようと思えば、いくらでも追求できます。
だからこそ面白い趣味なのだと思います。

ですが、理論や専門用語を最初から全部理解する必要もありません。

カーオーディオに興味を持った人が、「難しそうだからやめておこう」ではなく、「これくらいなら、自分もやってみようかな」と一歩を踏み出せる入口と選択肢が、もっとあってもいいと思います。

簡単なことからでも、音は変わります。
そして、もっとやりたくなれば、どこまでも追求できます。

興味が出てきたところから、一つずつ深くしていけばいい。
最初から目に見えないゴールを目指す必要はありません。

カーオーディオは、そんなに難しく考えなくてもいいです。
まずは、自分の好きな音楽が今より少し楽しく聴けるところから。

それで十分、カーオーディオの始まりだと思います。