2026/08/09 14:39


先日すでにご案内しましたが、今後弊社で取り扱うDSP製品については、STEGブランドへ統一し、エントリーモデルからフラッグシップモデルまで幅広く展開していきます。

これまで弊社では他モデルのDSPも取り扱ってきましたが、今後はSTEGを中心としたラインナップへ整理することで、お客様のご予算やシステム構成に合わせて、製品選びから供給、サポートまで、より分かりやすくご提案できる体制にしていきたいと考えています。

そこで今回は、弊社がSTEGを中心に展開していく理由にもつながる「DSPの音質は何で決まるのか?」というテーマについて掘り下げてみたいと思います。

DSPを比較するとき、搭載されているDSP ICやADC、DACなどの型番が注目されることがあります。

もちろん、これらは製品の性能や設計思想を知るうえで重要な情報であり、弊社でも製品説明の中でご案内しています。

しかし実際のDSPは、

「○○というチップを搭載しているから高音質」

というほど単純なものではありません。

STEGのDSPの良さを理解していただくうえでも、まずはこの部分から説明してみたいと思います。

◆「高性能なDSPチップ=高音質」ではない


DSP製品を調べていると、

「○○社製DSPを搭載」
「DSPを2基搭載」
「高性能DACを採用」

といった説明を目にすることがあります。

確かに、高性能なデバイスを採用することは優れたDSPを作るための重要な要素の一つですし、弊社でも製品の特徴としてご案内しています。

しかし、ここで少し注意したいのが、搭載されているチップの型番や数だけでは、実際の音質までは判断できないということです。

例えばDSP ICの場合、型番の数字が大きいものや新しいものほど高音質に思えるかもしれません。

しかし、DSP ICの違いには演算性能だけではなく、メモリ容量、I/O、対応する処理、システム構成の自由度など、さまざまな要素が含まれています。

そのため、型番の数字がそのまま「音質ランク」を表しているわけではありません。

また、DSPを2基搭載することで処理を分担したり、より複雑な演算を余裕を持って行ったりできる場合があります。

しかし、

「DSPが2基だから1基より必ず音が良い」
「DSPが2基だから演算精度も2倍になる」

というものでもありません。

重要なのは、搭載したDSPを使ってメーカーがどのような信号処理を行うよう設計しているのか、そしてそこにどのようなノウハウが投入されているのかです。

◆ADC・DACもチップの型番だけでは判断できない


ADCやDACも同様です。

アナログ入力の場合、音楽信号はADCによってデジタル信号へ変換され、DSP内部で処理された後、DACによって再びアナログ信号へ戻されます。

簡単に表すと、

アナログ入力
ADC
DSP
DAC
アナログ出力回路
アンプ

という流れになります。

一方、デジタル入力の場合は基本的にADCを通らないため、

デジタル入力
デジタル入力処理/クロック処理
DSP
DAC
アナログ出力回路
アンプ

という流れになります。

そのため、デジタル入力を使用する場合には、ADCの性能差は基本的にその音楽信号の変換経路には関係しません。

では、高性能なDACを搭載していれば、それだけで高音質になるのでしょうか。

これも、そう単純ではありません。

DACは最終的な音質を考えるうえで非常に重要なデバイスですが、私たちが実際に聴いているのは「DACチップ単体の音」ではありません。

DSP内部でどのように信号が処理され、その信号をDACがどのような環境で変換し、その後どのようなアナログ回路を通って出力されるのか。

そのすべてを含めて、一つのオーディオ機器としての音になります。

◆DSPの音質を左右するのは「システム全体」


DSPの音質を考える場合、搭載されているチップ以外にも非常に多くの要素があります。

その中でも重要なものの一つが、電源設計です。

DSP、ADC、DAC、クロック回路、オペアンプなど、それぞれの回路が本来の性能を発揮するためには、適切で安定した電源が必要になります。

これは車載機器では特に重要です。

自動車の12V電源には、オルタネーターをはじめ、ECU、モーター、DC-DCコンバーターなど、さまざまな電装機器が接続されています。

決してオーディオ機器にとって理想的な電源環境とは言えません。

そこからDSP内部で使用する電源をどのように作るのか。
デジタル回路とアナログ回路の電源をどのように扱うのか。
スイッチングノイズなどの影響をどこまで抑えるのか。

こうした電源設計も、製品としての性能を左右します。

そして、基板レイアウトも非常に重要です。

どれだけ高性能なADCやDACを採用していても、電源回路や高速なデジタル回路から発生するノイズがアナログ回路へ回り込んでしまえば、デバイスが持っている本来の性能を十分に引き出せない可能性があります。

つまり重要なのは、

「どの部品を採用したか」

だけではありません。

その部品をどこに配置するのか。
電源をどのように供給するのか。
信号をどのように通すのか。
アナログ回路とデジタル回路をどのように構成するのか。

こうした部分まで含めて、一つのDSP製品が完成します。

◆DSPだからこそ重要になる「内部処理」


そしてもう一つ、DSPならではの非常に重要な要素があります。

それが、DSP内部で行われる信号処理です。

同じDSPチップを搭載していたとしても、メーカーによって内部の処理は異なります。

入力された信号をどのようなサンプリングレートで処理するのか。
必要に応じたサンプルレート変換をどのように行うのか。
EQ、クロスオーバー、タイムアライメント、ゲインなどをどのような構成や順序で処理するのか。
演算時のヘッドルームをどのように確保するのか。

こうした部分にも、メーカーのDSP開発における設計思想やノウハウが表れます。

つまり、

「同じDSPチップを搭載している=同じ音」
「良いチップ=高音質」

ではなく、同じADCやDACを搭載していても、同じ音になるとは限りません。

逆に、一見すると非常に豪華なチップ構成であっても、それぞれのデバイスが持つ性能を十分に引き出せる設計になっていなければ、必ずしも期待した結果になるとは限りません。

◆「どのチップを使っているか」は重要。でも、それだけではない


ここまで書くと、

「ではDSPやADC、DACの種類は関係ないのか?」

と思われるかもしれません。

もちろん、そんなことはありません。

高性能なDSPには、より複雑な演算を行える処理能力やメモリなどがあり、高性能なADCやDACには、低歪み、高S/N、高ダイナミックレンジなどの優れた基本性能があります。

これらは優れたDSPを設計するうえで重要な「素材」です。

しかし、高級な食材を使えば必ず美味しい料理になるわけではないのと同じで、高性能なICを基板に載せただけで優れたDSPが完成するわけではありません。

大切なのは、そのデバイスが持っている性能を製品としてどこまで引き出せているかです。

そのため弊社では、DSPを評価するときに「搭載チップだけ」で製品を判断することはしていません。

◆STEGのDSPはスペック表だけで評価出来ない


これは、今後弊社がSTEGを中心にDSPを展開していく理由にもつながっています。

STEGのDSPについても、各モデルの位置付けに応じて必要なDSP、ADC、DACなどが選定されています。

エントリーモデルとフラッグシップモデルでは、求められる機能も処理能力も、製品に投入できるコストも異なります。

そのため、

「すべてのモデルに最高価格帯のデバイスを搭載すれば良い」

という考え方ではありません。

大切なのは、その価格帯、そのシステムに求められる性能を確保したうえで、一つのオーディオ製品としてどのように完成させるかです。

電源設計、クロック設計、基板レイアウト、アナログ入出力回路、DSP内部の信号処理、そして最終的なチューニング。

こうした「スペック表には表れにくい部分」まで含めた完成度の高さが音質に対しても重要になります。

◆STEGを評価する理由


下記は弊社がSTEGを評価している理由の一つでもあります。

DSPはデジタル信号処理を行う機器ですが、最終的にはDACでアナログ信号へ変換され、アンプを通してスピーカーを動かします。つまり、アナログオーディオの設計ノウハウが不可欠です。

STEGはDSP専業メーカーとして突然登場したわけではなく、長年にわたりカーオーディオ用アンプを手掛けてきたイタリア発祥のブランドです。

特に弊社がアンプ内蔵DSPにおいてSTEGを高く評価しているのは、スペック表の数字だけではなく、電源やアナログ回路のチューニングを含めた「一つのオーディオ機器としての総合的な完成度」の高さです。長年アンプを手掛けてきた経験やノウハウが、DSPアンプの音作りにも見事に活かされています。

◆エントリーからフラッグシップまでSTEGで展開する理由


今後弊社では、STEG DSPシリーズをエントリークラスからハイエンド、そしてフラッグシップまで幅広く展開していく予定です。

当然ながら、すべてのモデルが同じ性能、同じ音というわけではありません。

STEGでも上位モデルになるほど、より高度なDSP処理、多チャンネル化、より高性能なAD/DAの採用、電源やアナログ回路への物量投入など、コストを掛けることで可能になる設計があります。

一方で、必ずしもすべてのお客様にフラッグシップモデルが必要なわけでもありません。

使用するスピーカーやアンプ、システム構成、必要なチャンネル数、求める音、そしてご予算によって適切なDSPは変わります。

比較的シンプルなシステムであれば、エントリーモデルが最も合理的な選択になる場合もあります。

一方、本格的なマルチシステムや、さらに音質を追求するシステムでは、上位モデルだからこそ得られる性能や設計上のメリットが生きてきます。

だからこそ、エントリーからフラッグシップまで同じSTEGブランドの中で選択肢を用意することには意味があると考えています。

◆スペックは「材料」であって「答え」ではない


カーオーディオを趣味として楽しんでいると、使用されているDSP IC、ADC、DAC、オペアンプなどを調べることも楽しみの一つだと思います。

弊社も製品を見る際には、どのようなデバイスが使われているのかを確認します。

スペックを調べること自体を否定するつもりは全くありません。

むしろ、その製品の性能や設計思想を知るための非常に面白い情報だと思います。

ただし、それは製品を評価するための「材料」であって、「答え」ではありません。

DSPチップの型番だけで音質は決まりません。

DACやADCのメーカーだけでも、搭載されているICの数だけでも決まりません。

もちろん、それらは製品の性能を知るうえで重要な情報です。

しかし本当に重要なのは、それぞれのデバイスをどのように使い、電源、クロック、基板レイアウト、アナログ回路、DSP内部の信号処理、ソフトウェアまで含めて、一つのオーディオ機器としてどのように完成させているかだと考えています。

そして最終的には、スペック表の数字ではなく、実際にシステムへ組み込み、音楽を再生したときにどのような音を聴かせてくれるのかです。

今後弊社では、STEG DSPシリーズを比較的導入しやすいエントリークラスから、本格的なシステムに対応する上位モデル、そして妥協なく音質を追求するフラッグシップまで幅広く展開していきます。

単純な「搭載チップの豪華さ」だけではなく、一つのオーディオ機器としての総合的な完成度にも注目して、STEG DSPシリーズをご覧いただければと思います。

今後のラインナップにも、ぜひご期待ください。